なぜ精油の危険性をお伝えするのか? ~連載:精油の危険性について 第6回(最終回)~

みなさん、こんにちは。
これまで5回にわたって精油の危険性についてお伝えしてきました。
最終回は、なぜ危険性を取り上げたのか? その意図を少しだけお話したいと思います。

私は薬科大学に在籍し、これまでも精油を用いた臨床研究を数多く行ってきました。人を対象とする医学研究は「ヘルシンキ宣言」に基づき研究倫理審査委員会の承認が必須です。例えば、香りを嗅いでアンケートに答えてもらうような主観的かつ簡単な実験でもです。
一方、世間に目をむけるとリラクゼーションはじめ、心、体を整えるために精油が用いられています。このこと自体は、医療費削減に伴うセルフメディケーションや補完代替医療の流れからも、健康増進や疾病予防のための選択肢が増えて良いことだと思います。しかし、それとともに精油を扱う業者(個人も含め)は格段に増えました。異業種からの参入もあれば、化学的な知識を持たない人々など背景は様々です。私はそれを悪く言うつもりはありません。精油は薬事法で規定する医薬品などの許可を受けていないため、日本国内において「雑貨」扱いですから、誰がどんな品質の精油をどう販売しようと法的には自由です。
増える消費者、増える業者、そこに私は不安を感じました。「一般の人々は天然という言葉から精油を過度に安全なものと信じているのでは?」と。薬学的にみれば精油は薬と同じような危険性をもつ化合物であることを、みなさんに知って頂きたいというのが理由です。

適切に使用すれば、精油は怖いものではありません。

薬(西洋薬)はどうでしょうか?
薬は化学薬品です。副作用もあれば致死量もあります1)
漢方薬はどうでしょうか?
漢方薬は植物や生物、天然の鉱物を原料にしています。天然ですが間質性肺炎や肝機能障害など副作用が報告されています2)

天然由来という意味では、ハーブや精油も漢方と同じです。
ハーブは天然の植物を乾燥したもの。精油は天然の植物から抽出したもの。
(ここでは、ハーブの詳細については述べませんが——-)

精油の成分は、何十種類、何百種類もの化学物質のあつまりです。その成分が、みなさんの好きな香りのもとです。しかも濃縮されています。だからこそ、植物油(ホホバ油やスィートアーモンド油など)で薄めて使用します。
医師以外は治療などの目的で人体に使用することはできません3)

先日、芳香浴で具合が悪くなった方に出会いました。お話を伺うと日頃から薬、サプリメントを数種類飲み、休日には精油をお部屋で長時間炊いていたようです。これまでも、数回は同じような状態があったと話していました。 原因としては体調の変化もあるでしょうし、何らかの相互作用(この場合は、薬やサプリメントと精油の組み合わせがもたらす変化)がおこったとも考えられます。

いま、私たちの周りには医薬品以外にも、サプリメント、健康食品(機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品)など多くのものがあふれています。
精油はインターネットや実店舗で購入する方が多いので、使用した精油の履歴はご本人しか分かりません。そこに相互作用の危険性も潜んでいます。薬を服用中の方は「お薬手帳」に使用中の精油をメモ書きしておくのも良いかもしれません。

薬は、副作用(薬害)がおこれば製薬会社や行政の責任が問われます。しかし精油は使う側の自己責任です。また少し大げさかもしれませんが、私たちの体からみれば一見安全と考えられる精油も薬と同じく「異物である」という見方もできます。さらに体にどのように働き排出されるのか、まだわかっていないことも多いのです。
そのような精油の現状を知り,正しく使用すれば、精油は私たちの体調を整えてくれる頼もしい味方であると言えるでしょう。

最後におさらいになりますが安全に使うためのポイントです。

  • できるだけ成分や産地など情報量の多い精油を選ぶ
  • 高濃度で肌に塗布したり、飲用したりしない
  • 長時間・長期間おなじ精油を使用しない
  • 持病をお持ちの方、薬を服用している方は精油の使用について医師や薬剤師に相談する
  • 動物、とくにネコのいる環境では使用を控える

参考文献
1) 日本薬局方解説委員会, 日本薬局方解説書 第17改正, 廣川書店, 2016
2) 松原和夫 監修, エビデンス・ベース漢方薬活用ガイド, 京都廣川, 2015
3) 日本アロマセラピー学会編, アロマセラピー標準テキスト, 丸善出版, 2015

~これまでのお話~ (リンク)
第1回 ご存知でしたか? 精油は「雑貨」です!
第2回 精油は天然のものだから「安全」ですか!?
第3回 街で聞いた、ちょっと怖い!?精油の使用例①
第4回 街で聞いた、ちょっと怖い!?精油の使用例②
第5回 ペットもアロマセラピーで癒される??