ペットもアロマセラピーで癒される?? ~連載:精油の危険性について 第5回~

みなさん、こんにちは。
今年は戌年、お犬さまの年です。ここ数年、海外では「秋田犬:akita inu」 が大人気だそうです。秋田県知事がプーチン大統領にプレゼントした「ゆめ」や忠犬ハチ公も秋田犬。
私の好きなリチャード・ギア主演の「HACHI 約束の犬」のHACHIは、もちろん秋田犬だそうです。

そんな海外の犬人気とは別に、国内におけるペット数は「飼い猫の数が飼い犬の数を抜いた」1)との事。たしかに忙しい現代人には、日課として散歩の不用な猫ちゃんが飼いやすいですね。事実、私もそうでした。

イケメン慎ちゃん、知性・運動抜群な健ちゃん

さて、みなさんは家族の一員である可愛いワンちゃん、ネコちゃんにも精油を使っていませんか?「お部屋のなかで私と一緒に芳香浴しちゃおぅ!」 私がリラックスできるから「彼・彼女もリラックスするよね。きっと——-♡♡♡」と。

ちょっと、待って下さい!
私にはOKでも、彼や彼女にはNOの場合があります。
特にネコちゃんには注意が必要です。そもそも、人間も動物も外部から体内に取り込まれた物質は、肝臓の酵素で処理されたのち排泄されます。しかし、ネコちゃんは代謝酵素であるugt1a6の働きが弱いので2)、精油が肝臓に蓄積され肝障害を起こすそうです。精油の中でも特にクローブバッド、シナモンリーフ、オレガノ、タイムなどのフェノール類は禁忌、それ以外にはグレープフルーツ、レモン、ユズなど柑橘系に含まれるリモネン、ラベンダーやクロモジに含まれるリナロールなども注意が必要です3)。下の図は精油に含まれる代表的なフェノール化合物の構造式4)です。

一方、ワンちゃんは酵素の問題はないようです。濃度や使用法に注意すれば、それなりの効果は見られるようですし、イヌやネコに対するアロマセラピーは問題がないという報告もあります5)6)。また、実習用に飼育された成犬8頭(雄雌各4頭)を対象にカモミール、ペパーミント、ローズマリー、ラベンダー精油を嗅がせた実験では対象群(精油なし)に比べ、ストレスホルモンであるコルチゾール濃度に有意差はないものの、「睡眠」の発現割合が増加しリラックス効果が認められたと報告されています7)。グルーミングや旅行などで、ワンちゃん、ネコちゃんをサロンやペットホテルに預ける一時預かりはワンちゃん、ネコちゃんにとってもストレス。今後、ペットと香りの研究がさらに進んでくれるといいですね。

最近では、精油を水蒸気蒸留して得られる水層部分(芳香蒸留水)を用いた例も報告されています8)。芳香蒸留水は別名ハーブウォーター、プラントウォーター、アロマウォーター、ハイドロゾルなどとも呼ばれていて、水溶性の成分が多く含まれています。そのため希釈する必要がなく、そのままで使用できる手軽さがあります。また、肌と同じpH4.5-6の弱酸性で皮膚刺激も少ないことから乳幼児から高齢者まで使用できるのが特徴です。ただし抗菌成分はきわめて微量、そのため菌の繁殖には注意が必要です。

いずれにせよ、動物に対するアロマセラピーの研究成果や基準は、ヒト以上に少ない現状です9)。精油の使用にあたっては、ぜひ獣医師の先生にご相談下さい。

参考文献
1) 朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASKDP5HXCKDPPTFC00S.html
2) Shrestha, Reed JM, Starks PT, et.al., PLoS One. 2011 Mar 28;6(3):e18046.
3) 井上重治, 安部茂著, 抗菌アロマテラピーへの招待, フレグランスジャーナル社(2011)
4) E・ジョイ・ボウルズ著, 熊谷千津訳, アロマテラピーを学ぶための「やさしい精油化学」, フレグランスジャーナル社(2002)
5) 朝岡紀行, aromatopia22(2), 19 (2013)
6) 松尾憙道, aromatopia 8(4), 38 (1999)
7) 桑原裕香理, 堀井隆行, 植竹勝治, 飯田穣, 田中智夫, 日本家畜管理学会誌, 46(1), 17 (2010)
8) 田邉和子, 田邉興記, 富研一, aromatopia 23(3), 35 (2014)
9) 中山恵美子, aromatopia22(2), 62 (2013)